<2020年2月23日 2019年度信徒講座Ⅱ・講演要旨>

<2020年2月23日 2019年度信徒講座Ⅱ・講演要旨>
2020年10月開催の第42回教団総会の争点

聖書の言葉:「平和を尋ね求め、追い求めよ」(詩編34:15)
小海 基
 
<メッセージ>

密接に繋がっている北村牧師免職問題と沖縄問題

〇北村慈郎牧師の戒規免職問題が起こってもう10年経過したことになる。当初は裁判闘争という形で解決の道が探られたのであったが、司法はこの問題は宗教団体内で解決すべきと判断し、不受理・棄却となった。
〇そもそも北村牧師が言質を取られるきっかけとなったのは日本基督教団第35回総会の聖餐式で、「2002年の第33回教団総会の幕切れに『距離を置く』と宣言されて以来、関係回復のめども立たず、沖縄教区を欠いたままでパンと杯を取れるか」と陪餐拒否したのを神奈川教区選出の信徒常議員(「全数連記」投票にあぐらをかいて今も平然と常議員を継続中!)に見とがめられたことがきっかけであった。
〇つまり、北村牧師免職問題と沖縄問題は、密接に繋がっているのだ。沖縄との合同のとらえ直しもそうなのだが、現在の教団執行部は、たった1つのアプローチがストップしただけに過ぎないのに、そこですべての議論を止めてしまって平気を決め込み、塩漬けにして放りっぱなしにしている。つまり、北村牧師の件では司法判断に頼れないということ、合同のとらえ直しで言えば「名称変更案」が「審議未了廃案」となったに過ぎない!のに、である。

空白の10年の間に出てきた多くの諸問題

〇10年前に、教団内で何が起きたのかを知らない世代の牧師、伝道師も生まれている。この人たちが「空白の10年」の「被害者」ではないのかと言えば、そんなことは全くない。教師検定試験で、教会現場で……と、様々なハラスメントが噴出したこの10年間でもあったと言える。
〇「負担金未納」でありながら「宣教委員長」や「教師検定委員長」の席にふんぞり返り、総会時の常議員選挙の際に、「全数連記」で口を封じられている私たちの納めた負担金を用いて「教憲・教規を守れ」と叫ぶ異様な光景が日常化したのだ。
〇こんなことでは、教会現場が委縮し、教勢も減少し、献金・負担金にも影響するのは当然である。

殊に深刻、危機状況にある出版局の現状と伝道

〇そのため日本基督教団はこの秋の教団総会で負担金を減らすための、大規模な「機構改定」を決議しようとしている。
〇2月3~4日に行われた常議員会で一番深刻だったのは、出版局理事会報告である。
〇出版不況と言われるが、過去5年間続いた赤字は特に深刻で、直近の2018年度に約3,800万円、2019年度に更に1,700万円の単年度赤字決算を出したほかに、何と3億円分もの在庫を抱えてしまっている。
〇これまで繰り返し標的として煽り立ててきた『讃美歌21』元凶説には全く根拠がなく、むしろ賛美歌・音楽部門だけが好調!ということも明らかになった。
〇このため新藤出版局長が7月末で辞任。第41総会期監査委員会からは12月5日付けで、「緊急意見」が出され、出版局直近の現金残高で抵当設定条件とされている「銀行借入残」3,400万円を割り込み、レッドゾーンに入っていることが指摘された。
〇民間なら「倒産」というところだが、かろうじてそれを免れているのは、同じ「日本基督教団」名で積み立てられている年金資産があるおかげである。
〇万一倒産にでもなったら、この年金資産に赤紙が張られかねないのである。
〇思い出してもいただきたい。この10年間、全数連記で教団の出版局のヘゲモニーを握った人たちが何をしてきたか。
〇「信徒の友」誌や単行本の執筆者に対して「違法聖餐」を口実に検閲まがいの攻撃を繰り返し、編集部を委縮させてしまった。
〇かつて「信徒の友」誌では三浦綾子の『塩狩峠』を連載し、教団に連なるほぼすべての家庭に1冊と言われたほど広く読まれた時期もあった。荻窪教会で長年長老を務められた高見澤潤子さんが長年編集委員長でもあった。
〇ちなみに、『塩狩峠』の連載は、宗教界で評判になったという点で、創価学会の横山光輝『三国志』連載と並ぶ宗教界の「伝説的」連載!と言えるものであった。
〇そうした一時期には、カトリックの『あけほの』誌や福音派の『百万人の福音』誌まで含めても、キリスト教界最大の購読者数を誇った時期もあった!
〇そうした「信徒の友」さえも、現在は内容の陳腐化で部数が大幅減となってしまっている。
〇最近の「信徒の友」誌で言えば、各教区から選ばれた2つの「祈りに覚える教会」が挙げられ、集中的に祈り支援するという、どうしようもない企画も始まった。
〇たった「2教会」に推薦教会を絞ることの困難さを訴える声が各教区から噴出している(京都教区から反対の「意見表明」も出された)。こうした形で「伝道」が「熱く」推進されると考える方がどうかしている。
〇常議員会や教団レベルで考えるべきなのは、もっと巨視的な視点、構造的格差問題に対する方策であるべきなのである。根本的に何も考えず、何も見ようとしていないで、おざなりに「伝道」を振りかざし続けているところにも、現場から挙がっている声に一切耳を傾ける姿勢が感じられない。「一に伝道、二に伝道……」、「青年伝道決議」、「伝道に熱くなる」……等と豪語したところで内実がついていかない。
〇自称「教団改革勢力」を豪語し、「全数連記」選挙で議席をとってきたグループである「日本基督教団福音主義教会連合」紙の新年号、第511号(2020年1月刊)巻頭の長山信夫牧師(安藤記念教会)の説教が、まるで「敗北宣言」じゃないかと巷では話題になっている。
〇説教では次のように書かれている(要旨)。
〇「今年4月28日に福音主義教会連合は創立43周年記念日を迎える。3年前40周年であったことになるが、その年、誰も記念集会を持とうと提案しなかった。荒野の40年を経ても約束の地に到達することはなかったのである。一見正常化しているかに見える日本基督教団であるが、信仰告白によって一致しているはずの我々の中に分裂が生じ、同志的結合が薄れてしまった。ワンチームはラグビーの世界のこととなってしまっている。教勢の衰退が叫ばれて久しい。かつては造反のせいにしていたが、会議の正常化が成った今も低落傾向を止めることが出来ない」。
〇なるほどここ数年の同紙の「献金感謝報告」を見ると、かつては2頁にわたって、びっしりと並んでいた献金者、献金教会名が4分の1頁にも満たないスカスカのものになり果てており、特に教会からの献金が激減していることが分かる。
〇結局、今年10月の教区総会までには、教団総会議員と常議員の半数削減案でお茶を濁すという、まことにお粗末な結末となりそうだ。
〇「教団ジャーナル 風」紙に載せられた大阪教区選出議員の述べていた通り「本気度が見透かされてしまう」と批判されても仕方ない。

この出版局と伝道の危機の「空白の10年間」をこの秋で終え、教団は今度こそ「平和を尋ね求め、追い求め(詩編34・15)」る群れとならなければならない。