<メッセージ>
南米チリの落盤事故での救出が始まったとのニュースが流れました。地上の人達は、救出まで閉じ込められた人達に対して、「あなた達は孤立していない」というメッセージを送り続けました。このことは、今回の伝道礼拝のシリーズにふさわしい共通したテーマだと思うのです。
今日本では、高い自殺率や虐待、いじめ、行方不明の高齢者の問題等、人間関係の崩壊を思わせるニュースが続いています。
「人間」という漢字は、人同士の横の関係を言います。人間関係なくして、人間という存在がありえないのは確かです。この横の関係が崩れた「孤独」「孤立」は、人間の存亡にまで係わる大問題です。
「人間」を意味するギリシャ語「アンスローポス」は、「天を見上げる者」という意味です。だから、うつむいていては本来の人間から離れていく。つまり、人間の「孤独」「孤立」は、究極的には天におられる神との関係で見なければ、横や下ばかりを見ていても天を見上げなければ、本当に語れないと聖書は言います。さらに、『あなた達は本当に孤立しているのか』と問いかけるのです。チリの真っ暗な坑道のような状況があなた方を取り巻いているかもしれない。横だけを見ていれば真っ暗闇しか見えないかもしれない。しかし、あなた方が目を上に向けて見れば、天は大きく開けていて、そこに神が共におられるのだと聖書は語るのです。
列王記の主人公で、モーセと並ぶほどの旧約聖書最大の預言者である「エリヤ」は、北イスラエルのアハブ王とイゼベル王妃に真の神に立ち返るようにと直言した多くの預言者が殺された中にあって、ただ一人生き残って、孤立感を抱きながらも強大な国家権力と闘った人です。
「エリヤ」という名は、「主こそ神」という意味です。エリヤは、その名の通り、旧約の預言者の中でも、主こそ神を示すにふさわしい奇跡をカルメル山で行いました。誰の目にも真の神は、バアルやアシェラといった偶神ではなく、エリヤが指し示す神であることが明らかになったにもかかわらず、エリヤは命を狙われるのです。これほど神が確かにおられるのだという奇跡を目の当たりにしても、誰一人、真の神に立ち返ろうとしなかった。これにはエリヤは絶望しました。孤独・孤立のうちに、エリヤは再度原点に立ち返るべく、シナイ山に登り、そこで、「エリヤよ、ここで何をしているのか」との神の声を聴きます。
そして、神は、静かにささやく声で『あなたは本当に孤立しているのか』と問われるのです。「あなたは孤立などしていない、弟子となるエリシャなど三人のあなたの味方がいる。いやそれどころか、イスラエルにはあなたと同じように闘っている者が七千人もいる、あなたが気付かないだけなのだ」、とエリヤを励まされたのです。
少ないと言われている日本のキリスト者ですが、しかし少なくとも7千人以上はいるでしょう。そしてこの7千人が、この真っ暗闇の嵐の海のような日本の中で、灯台のように光を輝かせている。『本当に孤立しているのか』という神の問いを仲介している7千人、いや、もっと多くの人が日本の教会にいるということを、そして、私たちは孤立などしていないということを、もう一度、考え直して、エリヤのように立ち上がっていきたいと思います。
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